コラム
第165回芥川賞、直木賞受賞作品を読んで
代表取締役 萩原 誠
本を印刷する印刷会社の社長として、毎年発表される様々な文学賞には特に興味があります。本屋大賞の上位5作までの作品は必ず購入して読んでいます。私の毎年の密かな楽しみです。
今年の第165回芥川賞、直木賞では残念ながら当社で組版・印刷をさせて頂いた作品は含まれていませんでしたが、読んで見たい本が何冊かありました。
芥川賞受賞作品の、李琴峰著「彼岸花が咲く島」は沖縄に何となく似た架空の島に漂着した記憶喪失の少女と島の少女の成長物語です。島ではノロと呼ばれる女性が指導力をもち、男性よりも高い地位にいるという設定です。話される言葉も漢語の混ざった「ニホン語」と、日本語とほぼ同じ「女語」の2つの言語が併存する。なぜこのような社会が確立されたのか、少女の成長とともに、過去の暗い事実が解き明かされ、大ノロから語られる過去の歴史にはとても重いものがありました。異世界の世界のことながら、文章も読みやすく、すぐに読了しました。
第165回の直木賞では、いつもお世話になっている出版社の辻社長さんが親しい著者としてご紹介頂いた、澤田瞳子著「星落ちて、なお」を読みました。この作品は、幕末から明治にかけて活躍した絵師=河鍋暁斎の娘で、自身も絵の道に進む主人公「とよ」の目線で描かれた父と娘の物語です。偉大な父を持った娘が、その才能を比較され悩みながら、人生の荒波に翻弄されつつも、健気に生きて行く姿勢に感銘を受けました。
実は一番強烈に印象に残った作品は佐藤究著「テスカトリポカ」です。四六版で500頁を超える大作でしたが、ストーリー展開の予想がつかず、のめり込んで数日で読破しました。内容もかつての直木賞ではあまり取り上げられなかった闇取引での麻薬、臓器売買ビジネスを中心に物語が進んでいきます。国を超えたストーリー展開、圧倒的なスケール、構想力、詳細な取材力に興奮の連続でした。かなりハードな内容ではありますが、そこにアステカ王国の神々の話が織り込まれて、物語を複雑にして行きます。こんな世界がどこかで本当に実在すると思うと恐怖を覚えました。しかしその内容は暴力的ではあるけれども、人間の奥深さ、哀しさ、やさしさに胸を打たれました。
以上が私の感想ですが、興味を持たれた方はぜひお読み下さい。日常とは違った世界に触れることができ、自身の世界観が広がるのを体感できます。
今年の第165回芥川賞、直木賞では残念ながら当社で組版・印刷をさせて頂いた作品は含まれていませんでしたが、読んで見たい本が何冊かありました。
芥川賞受賞作品の、李琴峰著「彼岸花が咲く島」は沖縄に何となく似た架空の島に漂着した記憶喪失の少女と島の少女の成長物語です。島ではノロと呼ばれる女性が指導力をもち、男性よりも高い地位にいるという設定です。話される言葉も漢語の混ざった「ニホン語」と、日本語とほぼ同じ「女語」の2つの言語が併存する。なぜこのような社会が確立されたのか、少女の成長とともに、過去の暗い事実が解き明かされ、大ノロから語られる過去の歴史にはとても重いものがありました。異世界の世界のことながら、文章も読みやすく、すぐに読了しました。
第165回の直木賞では、いつもお世話になっている出版社の辻社長さんが親しい著者としてご紹介頂いた、澤田瞳子著「星落ちて、なお」を読みました。この作品は、幕末から明治にかけて活躍した絵師=河鍋暁斎の娘で、自身も絵の道に進む主人公「とよ」の目線で描かれた父と娘の物語です。偉大な父を持った娘が、その才能を比較され悩みながら、人生の荒波に翻弄されつつも、健気に生きて行く姿勢に感銘を受けました。
実は一番強烈に印象に残った作品は佐藤究著「テスカトリポカ」です。四六版で500頁を超える大作でしたが、ストーリー展開の予想がつかず、のめり込んで数日で読破しました。内容もかつての直木賞ではあまり取り上げられなかった闇取引での麻薬、臓器売買ビジネスを中心に物語が進んでいきます。国を超えたストーリー展開、圧倒的なスケール、構想力、詳細な取材力に興奮の連続でした。かなりハードな内容ではありますが、そこにアステカ王国の神々の話が織り込まれて、物語を複雑にして行きます。こんな世界がどこかで本当に実在すると思うと恐怖を覚えました。しかしその内容は暴力的ではあるけれども、人間の奥深さ、哀しさ、やさしさに胸を打たれました。
以上が私の感想ですが、興味を持たれた方はぜひお読み下さい。日常とは違った世界に触れることができ、自身の世界観が広がるのを体感できます。