コラム
おしごと時々手製本 「しまう」
営業部
本の修理に携わっていた時期に、修復の仕方や適正な素材などを調べたりしているうちに、「手製本」にたどり着きました。
自分の好きな装丁に仕上げたり、壊れてしまったお気に入りの本を改装したりするためには、まず本がどのようなつくりをしているかを学ぶ必要がありました。知れば知るほど製本の奥深さに惹かれ、趣味:手製本はかれこれ6年くらいになります。
その手製本で私の好きなものの中の一つが、ハコ作り。本をしまうためのハコを作るのですが、これがちょうどいいぴったりのサイズに作れた時の気持ちよさといったら、何とも言えません。ゆるくても、きつくても駄目。本を傷めないためのちょうど良いぴったりのサイズでなくてはいけません。
さて、本をしまうハコ(函・箱)というと、大体思い浮かべられるのが差し込み式のスリーブケースですが、その他にも夫婦箱、和本をしまうための帙(ちつ)というものがあります。夫婦箱は箱本体と蓋が一体となったもの。帙は和本を保護するための箱で、一般的なものは無双帙(巻帙)といい、その他に天地左右を包むものを四方秩、箱型のものを箱帙があります。いろいろありますね。
普段はなかなかお目にかかれないので、ピンと来づらいかもしれませんが、古書店などに行くと見ることができると思います。
素敵な和紙をいただいたので、ちょっと作ってみました。
(材料 表紙:友禅和紙 箱:粕入紙(赤) ボール紙:1㎜)
これが夫婦箱です。小さく名刺サイズに応用しました(縦にすると小さな本みたいでかわいい)。名刺を入れる側の箱の部分は実際の名刺のサイズより天地左右1~2㎜大きくしてあります。この少しの隙間を開けたぴったりサイズと、きれいに入った溝が気持ち良い。
箱に使った和紙がちょっと薄くてうっすら下のボール紙の色味が透けてしまったところが気になりますが、綺麗にできたかなと思います。
本をしまうハコも、サイズや形を少し変えるとこうした名刺入れや、文房具へと応用することができます。例えば箱帙はふでばこにしたり……。
作り方と紙の特徴を知ると、そこからいろんなアイディアが生まれ、それは無限です。せっかく本や紙に囲まれた環境で仕事をしていますし、また何か面白いものを作りたいなと、日々アイディアを模索中です。