コラム
国際総合印刷機材展drupa 2016視察レポート
製造部
7月のコラムをお届けします。6月5日から11日まで、当社の井上次長と、萩原司朗次長がドイツ、デュッセルドルフで開催されたdrupa2016に参加されました。drupaは開催各年にキーワードがあり、印刷技術の変遷が理解できます。ちなみに、「drupa1990 DTP drupa」、「drupa1995 CTP drupe」、「drupa2000 Digital drupe」、「drupa2004 JDF drupa」、「drupa 2008 Inkjet drupa」、「drupa2012年 All Digital drupa」、そして今年は「touch the future」です。
二人は会社を代表して、次の時代の印刷や加工、製本等の設備を見学し、見聞を広げてくれました。丁度旬な話題ですので、井上次長の『drupa 2016視察レポート』をお送りします。
萩原誠
萩原印刷 製造部印刷課 井上圭一
drupa2016が5月31日~6月10日の11日間、ドイツのデュッセルドルフで開催されました。
私が参加したツアーは、SCREENが主催した視察ツアーで6月5日~11日までの期間、どのコースも定員をオーバーするほどの人気のあるツアーでした。
4年に一度の世界最大規模を誇る国際総合印刷機材展という事で、世界50カ国以上から1.837社・団体の企業が出展し、デュッセルドルフ メッセ全19ホール全てを使用し盛大に催されていました。
他にも世界の印刷機材展がIPEX(英)、PRINT(米)、IGAS(日)とありますが、やはりdrupaが最も規模が大きく、機器メーカーや資材メーカーもdrupaに照準を合わせて開発しており、各メーカーの最新の技術動向が把握でき、また将来の印刷産業の方向性を掴むチャンスでもありました。
まず私が会場に足を運び感じた事は、IGASに比べ規模もそうだが非常に活気がある事にびっくりさせられました。
※2016年の来場者数は26万人で、2000年(43万人)から徐々に来場者数が減少しているが・・・。
今回の公式テーマは「Touch the Future」(未来に触れろ)。
見どころは、将来的に成長が見込まれる
1. 印刷
2. 包装
3. マルチチャンネル
4. グリーン印刷
5. 3D印刷
6. 機能性印刷
の6つの分野がありましたが、私は主に1の印刷分野に重点を絞り込み視察を行ないました。
まずは
★KOMORI~
mpremia NS40(40インチ)↑
Landaナノインクを使用したデジタル印刷機。用紙の表面に瞬間的にインクを接着する事で高速で鮮明な耐摩耗性の高い印刷が可能で、既成印刷用原反に印刷する事ができるそうです。印刷速度は6500sphで最大解像度は1200×1200dpi、色数は4色だがオプションで7色まで対応でリリースは1~2年後です。※サンプル有り
上の2台はH-UV(LED)オフセット印刷機で、左がLITHRONE-GX40RP、右がLITHRONE-G37です。GX40RPの特徴はタンデム型の8色機で反転動作が無く、咥え方向が替わらず見当性に優れております。また台替え時は、版交換・ローラー&ブラン洗浄・色合わせ(カメラにによるフィードバック)まで同時に機械が自動で行ってくれ、これにより時間ロスの削減はもとより、スキルレスの実現も近づいたと感じました。ちなみに実演では台替から本刷りのまでの時間は2分15秒で、恐ろしいほど早かったです。※印刷速度は18000sph・紙厚0.04-0.5に対応
次にG37の特徴は、コンパクトでありながら菊全(640mm×940mm)まで対応できるA判機。従来の菊全4色機のスペースに6色機を設置できるコンパクトさです。まさに狭い日本に適しているサイズといえます。※印刷速度は15000sph・紙厚0.04-0.6に対応
★HEIDELBERG
↑注目は、何といってもこのPrimefire 106です。今回が初披露となったこの機械は、FFGSと共同開発した水性顔料インクによるB1判IJ機です。印刷速度は生産性重視で5000sph、品質重視で2000sphで最大解像度が1200×1200dpi、色数は4+オレンジ・グリーン・バイオレットの7色。リリースは1年から1.5年後です。
↑左がSpeedmaster XL 106-6+LYYLでSpeedmasterの新型なのか?人だかりが多く、派手さもありました。(英語でよく分からないのが残念です)
そして右がLabelfire 340という機種でデジタルラベル印刷機。UVインクジェットプリントを核にフレキソ・コロナ処理・ニス・コールドフォイル・ダイカッターユニット等の後工程が接続可能とのことです。
↑その他、ハイデルはこのような後工程の機材にも力を入れておりました。
★Landa
左がLANDA S10PでB1サイズの両面機でカタログ、ダイレクトメール、雑誌などをターゲットにした枚葉IJ機です。印刷速度は片面時13000sph、両面時6500sphで最大解像度が1200dpi、色数は4色+オレンジの5色?(コモリが7色なので?)
そして右がLANDA W10という機種で主にラベルや軟包装用のショートラン印刷用の輪転IJ印刷機。最大8色が印刷可能で、解像度も1200dpiと高解像度。↓
※LANDAは連日5回のシアタープレゼンテーション(ブース内)を行うなど、他とは違う派手さがありました。また印刷機の実演が始まると、何処からともなく人が集まるほどの注目ぶりでした。↓
★SCREEN
Truepress Jet520HD スクリーンのブースにおいて一番目についたのが、この520HDです。特徴はオフセットに迫る印刷品質と高速フルカラーバイアブルを両立させた事が持ち味です。印刷速度は120m/分で、解像度1200×1200dpi、色数は4色(標準)です。後日見学に訪れたユーザー様のIJ機は、これと同タイプでした。↓その他L350UVとL350をオンラインで接続し、印刷から後工程までのトータルソリューションや、レーザーカッター等のポストプレス分野も出展しておりました。(サンプル有り)↓
★Canon
ColorStream 6000 Chroma
700台を超える導入実績をColorStreamシリーズの現行機種。CMYKの4色でKはダブルヘッドとなっており、モノクロ印刷は最速150m/分、解像度は600dpi。またクロメラインクを採用する事により、色域が拡大し薄紙でも一定の品質になったそうです。導入実績が多い機械なので興味深いものがあります。※テクナウ社のインライン製本機を接続し実演したらしいですが、見逃してしまいました。
TECNAU社
あまり詳しくないですが、有名な会社です。
もっと視察してくればよかったと後悔しています。↓
★KONICA MINOLTA
KM-C カートン印刷用UVインクジェット機。B1サイズを印刷可能、紙器パッケージ向けで紙厚は0.3~1.2mm。(参考出品)
※初日に視察に行ったのですが、ベールに覆われていて(左の写真)拝見出来なかったので、次の日に再度訪れて写真を撮りました。こんな厚紙にまでデジタルが復旧してるとは驚きです。↓
★RMGT
RMGT DP7 液体トナータイプでB2サイズに対応するオフセットタイプの枚葉デジタル印刷機。印刷速度は6000sph、解像度は1200×1200dpi。従来の印刷機と同形なので気になる一品ですが、まだ参考出展でメーカーにも話を聞いてみましたが、発売の見通しはまだ付いていないようです。(サンプル有り)↓
★富士フィルム
Jet Press 720S 最新モデルで稼働性が20%向上し、カンバス地への印刷も可能になりました。印刷速度は2700sph、解像度が1200×1200dpi、紙厚0.1~0.3mm。
有名なだけにプレゼン時には混雑しておりました。↓
INKJET Technogy インクヘッドですが、富士はこちらの方に力をいれてるのではと・・・?いう話が聞こえました。↓
★HP(Hewlett-Packard)
HPのブースです。出展企業の中でブース面積が最大で、17ホール全てを使用していました。昨年のIGAS2015にくらべ3.6倍の規模だそうです。また他のブースに比べ、人の数や活気も多く感じられ、現在はこのHPが印刷機材メーカーで一番勢いがあると思いました。機材関連は56台を出展しており、私が特に目をひかれたのが下の写真のHP indigo50000(液体トナー)です。ロールtoロールのB1サイズが両面印刷可能で、生産性がA4換算でカラー575枚/分、モノクロ2300枚/分。両面機ということもあり、非常に興味深い(面白い)動きをしておりました。↓
HP PageWide Web Press T490HD(水性インクジェット) 42inch幅対応のカラー両面印刷機。ターゲットはDM・出版・商業印刷です。生産性は305m/分で、解像度が1600dpi。
このほかに同じタイプの一般書籍をターゲットにした、T490M HDというのも発表されました。ここも大人気でした。↓
※その他、HPのブースにはプレスからポストプレスの機材が、盛り沢山に並んでいました。↓
★Horizon
Drupa2016で後加工メーカーでは最大の規模でした。↓
★Highcon
デジタル後加工の会社で、3Dオプションモジュールという面白い加工機を出展してありました。またこの会社は2016年2月に小森と業務提携したそうです。※祭りごとのオブジェなどに使用するらしいです。(右の写真の飾りのような)↓
drupaを振り返って
今回の視察で印刷業界&加工業界ともに、間違いなくアナログからデジタルに転換していると確信しました。出展数もデジタル印刷機材、または後加工機材が以前の展覧会に比べはるかに多く、オフセット(印刷)が脇役になってしまっている感が感じ取れました。時代の流れに逆らうことは難しい、しかしここで足を止めてしまえばどんどん遅れていく。これから先、印刷会社は印刷だけでは無く、印刷会社が求められているモノを見極め、また方向性をしっかり捉え、何処を目指し会社を回していくかを、従業員全員で真剣に考えていかなければならないと痛感しました。
設備投資には金はかかるし、自社だけで取り組んでも先が見えないです。この状態では前に進めないと思います。やはりクライアントと手を組み、お互いに付加価値が付く仕組みを考え、クライアントに理解して貰う事が大切だと感じます。
何年後になるかは分からないが、これから先は徐々に・・・
1.オフセット印刷を軸とし、小ロット対応としてデジタル印刷にも着手していく。
2.印刷~後工程まで視野に入れた体制作り。
3.印刷~後工程~販促までを視野に入れた体制作り。
このように一貫して自社で製品を管理できる体制作りが、これから先は必要になってくると思います。